夕げ

こんにちは

夜ご飯を食べていた。今日の夜は新年度初回の男女合同の寮会と委員会の挨拶があるから、いつもより食堂は混んでいた。

テレビでは、小学3年生でいじめに遭い、不登校になった少女のエピソードが語られていた。少女は父と二人暮らしで、豊かとは言えない経済状況だった。彼女の父は、自分が先生となって授業をし、年に1回自転車旅行を計画した。少女は着実に心身ともに成長し、いまでは立派な大学生になっていた。

自宅で勉強している様子がテレビに映ったとき、わたしの後ろでご飯を食べていた女が「うわっ部屋きたなー!こんなのいじめられるに決まってんじゃん」と嘲るように笑った。

わたしは心臓を突かれたようになった。咀嚼が停止した。

もおーんと、遠くのサイレンみたいに耳が遠くなって口の中のご飯が冷たくなった。

もういやになった。ちょっと瞬いたら涙が出そうだった。

世の中には、こんなむごい人間がいるんだ。

それを言った奴は、容姿が整っていて、実家が医者で、私立の医大に通いながら医者を目指している。

世の中にはこんなむごい人間がいるんだ。こんなやつが。こんなやつがいる。

わたしはもう、どうしたらいいかわからない。なんだかわからないが、くやしい涙がとまらない。