夕げ

こんにちは

わたしは、まだ男女の愛を知らない。

結婚は、男女が永遠の愛を誓うという。

一生を共に過ごしたいと思った他人と、結婚をして、しばしば子を授かったりする。一生を誓い合った大切なひととの間に生まれた幼いひとは、どれほど大切な存在か、想像に難くない。

唐突にそれらを失ったかなしみを想像する機会に、わたしを含めた世間は接している。

わたしは、まだ男女の愛を知らない。子もいない。大切なひとと言って、一番に思い浮かぶのは両親である。祖母である。妹である。

彼らが唐突に、車に飛ばされて、何が何だかわからぬまま遠くへ行ったとしたら、どうか。冷たくなって、目を覚まさなくなったら、どうか。

大切なひとを一瞬に奪っていった人間が、罪を認めず、償わず、国家がそれを許し、助け、ただしく裁かれないとしたら、どうか。

妻と幼い娘をうしなった旦那さまが、会見で「絶望しています」と言った。声は涙にふるえていた。

わたしたちは、この悲劇を単なるドラマにするべきではない。

容疑者はその地位にかかわらず正当に裁かれ、罪を償うべきである。

こんなにもこの国に絶望する日がくるとは思わなかった。