夕げ

こんにちは

金木犀の夜

朝の間際、夜の去り際まで窓を開けて作業していると、昨日の朝に突然香り始めた金木犀の香りが遠慮がちな夜風といっしょに流れ込んできた。

夜の金木犀は、ふくよかで官能的な、秘めごとめいた香りに感じる。風呂上がりのシャンプーの香りが遠のいていくほどの強い香りは、自分よりずっと物知りで艶っぽい大人の香水が自分のシャツに移ったような気分になる。こちらは降参、しばらく何をしていても思い出してしまう。中秋の名月の夜に、身体に悪そうなほど甘ったるい香りの薄暗い街を、隣にいたらどきどきするような相手と散歩したらどうなるんだろう?自分以外の体温も知らないわたしは、外国の虹色のケーキの味を想像するような気持ちで布団に潜り込んだ。