夕げ

こんにちは

さよなら

その日、群青は星を連れて、どんどんやってきた。ぼくは自転車に乗りながら、本当に家に帰るべきかな?と思った。帰るべきかな?家に。群青が星を連れてきているのに?
街の輪郭がぼやけだした。自転車は、夕飯や石鹸の匂いと昼間の浮かれすぎた空気が同居する道を滑ってゆく。
ぼくは、友達がさっき言っていたことを思い出した。蝉、全部死んだかな?
そばだてた耳の鼓膜を、その不在がふるわせた。
そうして、ぼくは気づく。
ぼくに吹きつける風は鋭くとがって、ずっと遠くにいたはずの冬を内包していた。
ぼくははっとして、はっとしてそのあと、ゆき過ぎた夏をおもった。朝顔、波打ち際、蚊取り線香の煙。
群青は街を覆って、風は秋の到来を宣言した。
ぼくは去っていく浮かれた季節の後ろ姿を見ながら、どうしようもなく胸に迫る寂しさをあじわう。

秋が来たのだ。