夕げ

こんにちは

憂鬱を溶かせずに

名前も知らないひとの文章にあった、「わたしは大人になるにつれて、何者でもない自分に満足できなくなって、何者かになりたがって」という言葉。本当にその通りでいやになる。

義務教育、教室で一番作文が上手だった少女は、「得意なこと:文章を書くこと」と自称するのもためらわなかった。確固たる自信があった。

大学生になって、文学を志し、文学を愛するひとが集まる世界に飛び込んで、自信はあっけなく消えた。ゆっくり脆く崩れていくなんてもんではなくて、ふっとろうそくの火が消えるようにす~ぐ消えた。

同年代のひとが、わたしには紡ぎ得ない言葉で、わたしが言いたくて言葉にする方法がわからなかった感情や風景をちゃんと有形化していた。

「得意なことがあったこと 今じゃもう忘れてるのは それを自分より得意な誰かがいたから」

バンプオブチキンの才悩人応援歌が、まさに哀れなわたしを歌っているようで泣いた。わたしの場合、忘れるどころが毎日爪を噛んで「わたしだって、わたしだって」と、あの気持ち、あの光景を言葉にできない自分を憎んでいるんだけど。

「文章を書くのが得意」とは、恥ずかしくてかっこ悪くて、冗談でも涙が出そうで口にできなくなった。でも、評価を得られなくても、いや評価はされたいけど、でもまずは自分が納得できる文章を書きたい。

20歳。悩ましい年齢。夜が来るたびに自分について考えて、雨が降ればどうしようもない孤独に泣いている。